残クレの仕組みを数式で再現!通常のローンとも比較

残クレの仕組みを数式で再現!通常のローンとも比較

#数学#シミュレーター#ローン

💡 概要

本記事では,残価設定ローン(残クレ)の仕組みを数式で再現します. 一般的なローン(元利均等返済)と比べて,月々の支払額が少なくなる理由,残価を含む総支払額が高くなる理由も数式で説明します.

残クレの支払額

車両価格 aa,残価 b (a)b \ (\le a),支払回数 NN,年利率 θ\theta の下で残クレを考えます. 便宜のために月利率 tt を導入します. tt は次の式で計算されます:

t=θ12t = \frac{\theta}{12}

(厳密には t=(1+θ)1121t = (1 + \theta)^{\frac{1}{12}} - 1 ですが,実際には上式で計算されることが多いです)

このとき,残クレの毎月の支払額 cc

c=(1+t)Nab(1+t)N1tc = \frac{(1 + t)^N a - b}{(1 + t)^N - 1}t

で計算されます(導出は後述).

またNN 回目までの支払額の総額は

Nc=(1+t)Nab(1+t)N1tNNc=\frac{(1 + t)^N a - b}{(1 + t)^N - 1}t\cdot N

であり,さらに残価 bb を支払って買い取りする場合の総支払額 SS

S=Nc+b=(1+t)Nab(1+t)N1tN+bS=Nc+b=\frac{(1 + t)^N a - b}{(1 + t)^N - 1}t\cdot N+b

となります.

📐 導出

毎月支払額 c=(1+t)Nab(1+t)N1tc = \frac{(1 + t)^N a - b}{(1 + t)^N - 1}t を導出します.

まず,a0=aa_0=a とし,nn 回目の支払直後のローン残高を ana_n とします(1nN1 \leq n \leq N). ana_n は,n1n-1 回目の支払直後のローン残高 an1a_{n-1} から,利息分 tan1t a_{n-1} を加えた後に毎月の支払額 cc を引くことで計算できます:

an=an1+tan1c=(1+t)an1ca_n = a_{n-1} + t a_{n-1} - c = (1 + t) a_{n-1} - c

上記の漸化式を anct=(1+t)(an1ct)a_n-\frac{c}{t} = (1 + t) \left(a_{n-1}-\frac{c}{t}\right) と変形すれば,ancta_n-\frac{c}{t} は公比 (1+t)(1+t) ,初項 a0cta_0-\frac{c}{t} の等比数列となるので,

an=ct+(1+t)n(a0ct)=(1+t)na(1+t)n1tca_n= \frac{c}{t} + (1 + t)^n \left(a_0-\frac{c}{t}\right) = (1+t)^n a - \frac{(1+t)^n - 1}{t} c

が得られます. 最終支払後のローン残高は aN=ba_N=b なので,上式で n=Nn=N とすれば

b=(1+t)Na(1+t)N1tcb = (1+t)^N a - \frac{(1+t)^N - 1}{t} c

となり,cc が求められます.

共通の金利で通常ローンと比較

元金(車両価格) aa,支払回数 NN,月利率 tt の下で,残価 bb の残クレ通常のローン(元利均等返済) を比較します.

まず,通常ローンは,残価を 00 に設定した残クレ とみなすことができます. よってこの場合の毎月の支払額 cc' は,残クレの毎月支払額の式中の bb00 に置き換えることで計算できます:

c=(1+t)Na(1+t)N1tc' = \frac{(1 + t)^N a}{(1 + t)^N - 1}t

また,NN 回目までの支払総額 SS'

S=Nc=(1+t)Na(1+t)N1tNS' = N c' = \frac{(1 + t)^N a}{(1 + t)^N - 1}t \cdot N

で計算されます.

残クレの毎月支払額 cc を変形すると

c=(1+t)Na(1+t)N1tb(1+t)N1t=cb(1+t)N1t<c\begin{align*} c &= \frac{(1 + t)^N a}{(1 + t)^N - 1}t - \frac{b}{(1 + t)^N - 1}t\\ & = c' - \frac{b}{(1 + t)^N - 1}t\\ &< c' \end{align*}

となるので,毎月支払額は,残クレの方が通常のローンよりも安くなります

一方,残価を含めた支払総額 SS を変形すると

S=Nc+b=N(cb(1+t)N1t)+b=NcbtN(1+t)N1+b=S+b(1tN(1+t)N1)>S( (1+t)N1>tN)\begin{align*} S &= Nc+b\\ &= N \left(c' - \frac{b}{(1 + t)^N - 1}t \right) + b\\ &= Nc'- \frac{btN}{(1 + t)^N - 1} + b \\ &= S'+b\left( 1-\frac{t N}{(1 + t)^N - 1} \right)\\ &> S'\quad (\because \ (1 + t)^N - 1 > t N) \end{align*}

となるので,残価を含めた総支払額は,残クレの方が通常のローンよりも高くなります

結論

共通の金利で残クレと通常ローンを比較すると,

  • 残クレの方が毎月の支払額は安い
  • 残クレ方が残価を含めた総支払額は高い

シミュレーター

条件設定

万円
万円
%
月利率 t = θ/12 = 0.2917 %
ヶ月

計算結果の比較

項目残クレ通常ローン差額
毎月の支払額c: 36,245c': 54,575-18,330
支払総額(残価含まない)2,174,7083,274,514-
支払総額(残価含む)S: 3,374,708S': 3,274,514+100,194

ローン残高の推移

● 残クレローン残高● 通常ローン残高

金利が高くても月々が安い仕組み:異なる金利で通常ローンと比較

先ほどは,共通の金利の下で残クレと通常ローンを比較し,残クレの毎月支払額 << 通常ローンの毎月支払額 という結果を得ました. しかし,両者の金利は必ずしも同じではありません.

そこで,残クレの年利 θ\theta (月利 tt)と通常ローンの年利 θ\theta' (月利 tt')が異なる場合を考えます.

(1+t)N1+Nt(1 + t)^N \simeq 1 + Nt と近似すると,残クレの毎月支払額 cc と通常ローンの毎月支払額 cc' は以下のように近似できます:

c=(1+t)Nab(1+t)N1t(1+Nt)abNtt=ta+abNc=(1+t)Na(1+t)N1tta+aN\begin{align*} c &= \frac{(1 + t)^N a - b}{(1 + t)^N - 1}t \simeq \frac{(1 + Nt) a - b}{Nt}t = ta + \frac{a-b}{N} \\ c' &= \frac{(1 + t')^N a}{(1 + t')^N - 1}t' \simeq t'a + \frac{a}{N} \end{align*}

c<cc < c' であることと次の式は(ほぼ)同値です:

t<t+bNa(θ<θ+12bNa)t < t' + \frac{b}{Na}\quad \left(\Longleftrightarrow \theta < \theta' + \frac{12b}{Na} \right)

つまり,残クレ金利 θ\theta が通常ローン金利 θ\theta' より(最大 12bNa\frac{12b}{Na} 程度)高くても,毎月支払額は残クレの方が安くなります. 一方,このような(t>tt > t' の)場合,残クレ総額 S=Nc+bS=Nc+b と通常ローン総額 S=NcS'=Nc' の差は

SS=N(cc)+bN(ta+abNtaaN)+b=N(tt)ab+b>0\begin{align*} S - S' &= N(c-c')+b\\ &\simeq N\left(ta + \frac{a-b}{N} - t'a - \frac{a}{N}\right)+b\\ &= N(t-t')a - b + b > 0 \end{align*}

となり,支払総額は残クレの方が高くなります.

b=0.5ab= 0.5 a(残価が車両価格の半額),N=60N=60 (支払期間5年)のとき,

12bNa=120.5a60a=0.1=10%\frac{12b}{Na} = \frac{12 \cdot 0.5 a}{60 a} = 0.1 = 10\%

より, θ<θ+10%\theta< \theta' + 10\% の場合でも,残クレの毎月支払額は通常ローンのそれより安くなります(総額では S>SS>S').

おわりに

本記事では,残クレの仕組みを数式で再現し,通常のローンと比較しました. 残クレは目先の「毎月の支払額」が安くなりやすい一方,「総支払額」が高くなりやすいことが数学的にわかりました.

ご覧いただきありがとうございました.