投資信託の金額指定買付の端数処理(楽天,SBI,GMOクリック,eスマート,マネックス,松井)

投資信託の金額指定買付の端数処理(楽天,SBI,GMOクリック,eスマート,マネックス,松井)

#端数処理#数学#シミュレーター#投資信託

💡 概要

投資信託を金額指定で購入するとき,購入口数を整数にするために各証券会社で端数処理が行われます.本記事では主要ネット証券の端数処理に関する計算式をまとめます.

※ 2026/01/31 時点の仕様を紹介します(実際の数千件の約定履歴での処理結果が本記事の計算結果と一致することから計算式の正当性を期待できますが,数学的には保証されません)

✅定義

金額指定買付に登場する記号を次のように定義します:

  • bb [円]:投資信託の購入金額(整数)
  • pp [円/口]:投資信託の1口当たりの基準価格(約定価格)
  • rr [口]:投資信託の購入口数(整数)
    • 理想的な(口数を実数で保有できる)場合,購入口数は bp\dfrac{b}{p}
  • g=prbg=pr-b [円]:端数処理によって生じる損益(約定時点)
    • 約定時点の評価額 prpr と実際の購入金額 bb の差
    • 理想的な場合,約定時点で損益は生じません

また,実数 xx に対して以下の整数化関数を定めます:

  • ceil(x)\operatorname{ceil}(x)xx を整数に切り上げた値
  • floor(x)\operatorname{floor}(x)xx を整数に切り捨てた値
  • round(x)\operatorname{round}(x)xx四捨五入した値
整数化関数の使用例
  • 整数 nn に対し,ceil(n)=floor(n)=round(n)=n\operatorname{ceil}(n)=\operatorname{floor}(n)=\operatorname{round}(n)=n
  • ceil(3.21)=4\operatorname{ceil}(3.21)=4floor(3.21)=round(3.21)=3\operatorname{floor}(3.21)=\operatorname{round}(3.21)=3
  • ceil(4.56)=round(4.56)=5\operatorname{ceil}(4.56)=\operatorname{round}(4.56)=5floor(4.56)=4\operatorname{floor}(4.56)=4
⚠️ 注意

通常,投資信託の基準価格は「1万口あたり」で表示されます. このとき,pp は提示価格を10000で割って求める必要があります.

例: 投資信託「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の基準価格は2025年11月14日時点で38,066円です. このとき,1口当たりの基準価格は p=3.8066p=3.8066 円です.

eMAXIS Slimの基準価格画面

参考:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)|eMAXIS(イーマクシス)

✅計算例・シミュレーター

具体的な数式の前に,様々な金額 bb と価格 pp に対し,口数 rr や損益 gg を計算した例とシミュレーターを掲載します.

投資信託の金額指定買付における口数の端数処理

購入金額 bb100100879721840761
基準価格 pp3.45679.87659.87659.87659.87659.8765
理想口数 b/pb/p28.929310.125088.999173.001585.050377.0515


A
購入口数 rr
(b/pb/p 切り上げ)
291189748678
約定時損益 gg
(0g<p0 \le g \lt p)
0.24438.64150.0085
(0\simeq 0)
9.861
(p\simeq p)
9.3799.367


B
切り捨て口数 r0r_0
(b/pb/p 切り捨て)
281088738577
四捨五入評価額 b0b_0
(pr0pr_0 四捨五入)
9799869721840760
購入口数 rr
(b0<bb_0 \lt b なら1加算)
29118973
(加算なし)
85
(加算なし)
78
約定時損益 gg
(0.5g<p0.5-0.5 \le g \lt p - 0.5)
0.24438.64150.00850.0155-0.01550.4975-0.4975
(0.5\simeq -0.5)
9.367
(p0.5\simeq p - 0.5)
gg の上限 (p0.5p - 0.5)2.95679.37659.37659.37659.37659.3765
投資信託の金額指定買付 端数処理シミュレーター(1)
区分計算項目シミュレート結果
共通購入金額 b100
基準価格 p3.4567
理想口数 b/p28.92933
方式A購入口数 r (b/p 切り上げ)29
約定時損益 g (0 ≤ g < p)0.24430
方式B切り捨て口数 r0 (b/p 切り捨て)28
四捨五入評価額 b0 (pr0 四捨五入)97
購入口数 r (b0 < b なら1加算)29(+1加算)
約定時損益 g (-0.5 ≤ g < p - 0.5)0.24430
g の上限 (p - 0.5)2.95670
投資信託の金額指定買付 端数処理シミュレーター(2)

口数 rr の計算には2つの方式(A,B)があります.まずは違いを簡単に説明します.

方式A(該当:eスマート, マネックス, 松井)

  • rr は理想口数 bp\dfrac{b}{p} を切り上げた値
  • 投資家は 00pp 円得する

方式B(該当:楽天, SBI, GMOクリック)

  1. 理想口数を切り捨て → r0r_0
  2. r0r_0 口購入時の評価額 pr0pr_0 を四捨五入 → b0b_0
  3. 不足(b0<bb_0 < b)時は1口加算 → r=r0+1r = r_0+1 口 (b0=bb_0 = b なら r=r0r = r_0 口)

投資家は 0.5-0.5p0.5p-0.5 円得する (最大0.5円損する場合がある)

以下では,2つの方式をより詳しく扱います.

✅方式A(切り上げ):eスマート, マネックス, 松井

eスマート証券,マネックス証券,松井証券では,購入口数は理想的な口数を切り上げるだけで決まります:

r=ceil(bp)r=\operatorname{ceil}\left(\frac{b}{p}\right)

このとき bpr<bp+1\frac{b}{p} \le r < \frac{b}{p}+1 (切り上げ関数の性質)から損益 g=prbg=pr-b は次の範囲をとります:

0g<p0 \le g < p

つまり,方式Aでは約定時点で損失は発生せず,最大で1口分の価格(pp 円)だけ得をする可能性があります. 特に,100円投資(b=100b=100)の場合は,約定と同時に 00 %~ pp %の利益が発生します.

✅方式B(切り捨て→四捨五入→不足時追加):楽天, SBI, GMOクリック

方式Bの計算方法は,下記の情報を整理したものです. ※楽天証券, SBI証券, GMOクリック証券で,この計算方法が適用されることを私自身で確認しています.

投資信託を金額指定で取引した場合の、端数分の計算 (投資信託ガイド ー初心者向けに徹底解説!)

楽天証券,SBI証券,GMOクリック証券では,購入口数は3つの手順で決まります:

  1. 理想的口数を切り捨て:r0=floor(bp)\displaystyle{r_{0}=\operatorname{floor}\left(\frac{b}{p}\right)}
  2. r0r_0 口購入した場合の評価額を四捨五入:b0=round(pr0)b_{0}=\operatorname{round}\left(pr_{0}\right)
  3. b0b_0bb 未満なら1口追加:
r={r0+1if b0<br0if b0=br=\begin{cases} r_{0}+1 & \text{if } b_{0} < b\\ r_{0} & \text{if } b_{0} = b \end{cases}

b0>bb_{0} > b となることはありません(導出は後述)

このとき,損益 g=prbg=pr-b は次の範囲をとります(導出は後述):

0.5g<p0.5-0.5 \le g < p-0.5

つまり,方式Bは方式Aより損益の取り得る範囲が0.5円だけ下方向へ移動します(損する可能性あり). 特に,100円投資(b=100b=100)の場合は,約定と同時に 0.5-0.5 %~ p0.5p-0.5 %の利益が発生します. また,p<0.5p < 0.5 (表示価格5,000円未満)のときは必ず損をするのが特徴的です.

📐 導出

b0bb_{0} \le b の導出

  • 切り捨て関数の性質より,bp1<r0=floor(bp)bp\dfrac{b}{p}-1 < r_{0} = \operatorname{floor}\left(\dfrac{b}{p}\right) \le \dfrac{b}{p}
  • 各辺に pp をかけると,bp<pr0bb-p < pr_{0} \le b
  • このうち中辺・右辺を四捨五入すると,(b0=)round(pr0)round(b)(b_{0}=)\operatorname{round}(pr_{0}) \le \operatorname{round}(b)
  • 整数 bb は四捨五入しても bb のままなので,b0bb_{0} \le b

0.5g<p0.5-0.5 \le g < p-0.5 の導出

  • b0=bb_{0}=br=r0r=r_{0})のとき:四捨五入の定義から b0.5pr0bb-0.5 \le pr_{0} \le b なので,
    • g=pr0bbb=0g=pr_{0}-b \le b-b=0
    • g(b0.5)b=0.5g \ge (b-0.5)-b=-0.5
  • b0<bb_{0} < br=r0+1r=r_{0}+1)のときbp<pr0<b0.5b-p < pr_{0} < b-0.5 なので,
    • g=p(r0+1)b<(b0.5)+pb=p0.5g=p(r_{0}+1)-b < (b-0.5)+p-b=p-0.5
    • g>(bp)+pb=0g > (b-p)+p-b=0

以上をまとめると 0.5g<p0.5-0.5 \le g < p-0.5 が得られます.

✅補足:方式Aの方が有利

方式A,Bを比較したとき,AはBより不利になることはありません.つまり,購入口数 rr をAで計算した値はBで計算した値以上になります. これを簡単に確認します. 任意に購入金額 bb (整数)と基準価格 pp (正の数)をとります.

  • bp\dfrac{b}{p} が整数のとき
    • 方式A:r=ceil(bp)=bpr=\operatorname{ceil}\left(\dfrac{b}{p}\right)=\dfrac{b}{p}
    • 方式B:r0=floor(bp)=bpr_{0}=\operatorname{floor}\left(\dfrac{b}{p}\right)=\dfrac{b}{p}b0=round(pr0)=bb_{0}=\operatorname{round}(pr_{0})=b より r=r0=bpr=r_{0}=\dfrac{b}{p}

となり,両方式で購入口数は一致します.

  • bp\dfrac{b}{p} が整数でない(0でない小数部分をもつ)とき
    • 方式A:r=ceil(bp)=floor(bp)+1r=\operatorname{ceil}\left(\dfrac{b}{p}\right)=\operatorname{floor}\left(\dfrac{b}{p}\right)+1
    • 方式B:r0=floor(bp)r_{0}=\operatorname{floor}\left(\dfrac{b}{p}\right)rr0+1=floor(bp)+1r \le r_{0}+1=\operatorname{floor}\left(\dfrac{b}{p}\right)+1

なので,rr をAで計算した値はBで計算した値以上です.

おわりに

本記事では,端数処理の方法を金額指定買付に限定して紹介しましたが,今後口数指定購入時の支払い金額の端数処理,金額(口数)指定売却時の口数(金額)端数処理も扱うかもしれません. ご覧いただきありがとうございました.